2026年05月01日更新

認知症治療薬の一覧|対象となる患者さんや効果・副作用について解説

認知症の治療では、ケアや生活環境の調整などの非薬物療法を土台にしつつ、必要に応じてお薬による治療を組み合わせることで進行を緩やかにし、認知機能や生活機能をできるだけ保つことを目指します。
認知症治療薬には、従来から使われている薬に加え、近年は原因物質に作用する新たな薬も登場しています。現在使われている薬の種類や特徴、副作用、服用時の注意点について解説します。

認知症の薬の治療目標とは?

認知症とは、一度身についた記憶や判断力などの認知機能が脳の病気によって低下し、日常生活の中に影響を及ぼす状態です。

認知症の治療に使われる薬は、認知機能や生活機能が低下するスピードを緩やかにする効果が期待できます。近年は、認知症の原因物質に直接働きかけて認知機能の低下を抑えるとされる新しい薬も登場しています。

ただし、いずれの薬も完全に進行を止められるものではありません。認知症を治すのではなく進行を遅らせて、少しでも長く今までの暮らしを続けられるようにするのが目標です。

認知症の薬一覧と特徴

認知症の治療には、従来使用されている薬に加え、抗アミロイドβ(ベータ)抗体薬という新しい薬が登場しています。それぞれ作用や適応する症状の程度が異なり、患者さんの状態に応じて選択されます。

従来から使われている認知症の薬

これまで認知症の治療で使用されてきた薬は、大きく、コリンエステラーゼ阻害薬NMDA受容体拮抗薬に分けられます。それぞれの薬剤について、以下の表にまとめました。

【一覧表】※コリンE阻害薬=コリンエステラーゼ阻害薬、NMDA拮抗薬=NMDA受容体拮抗薬

一般名ドネペジルガランタミンリバスチグミンメマンチン
分類コリンE阻害薬コリンE阻害薬コリンE阻害薬NMDA拮抗薬
効能(重症度)軽度~重度軽度・中等度軽度・中等度中等度・重度
投与回数1日1回1日2回1日1回1日1回
剤形(薬の形状)錠、細粒、口腔内崩壊錠、パッチ錠、口腔内崩壊錠、内用液パッチ錠、口腔内崩壊錠

4剤はいずれも認知症に用いられますが、これらの薬が保険適用となっているのはアルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症に対してです。
ドネペジルの内服薬はアルツハイマー型認知症に加え、レビー小体型認知症にも適応があります。 ガランタミン、リバスチグミン、メマンチンはアルツハイマー型認知症のみ適応です。

【関連記事】アルツハイマーと認知症は違うもの?アルツハイマー型認知症の原因や症状を解説

【関連記事】レビー小体型認知症とは?原因や症状、症状別の対処法について

コリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン)

アセチルコリンという神経伝達物質の分解を抑えることで脳内のアセチルコリンを増加させ、認知機能の改善を目指す薬です。また、以下のような行動・心理症状に対する効果も報告されています。

ドネペジル:無気力や抑うつ、不安の軽減

ガランタミン:不安や興奮、脱抑制や異常な行動の改善

リバスチグミン:無気力や不安、脱抑制、妄想、食事に関する行動の異常、夜間の問題行動の改善

※脱抑制とは、感情や行動のコントロールができなくなる状態のこと。

NMDA受容体拮抗薬(メマンチン)

過剰なグルタミン酸による、脳の神経へのダメージを防ぐ働きがあると考えられています。また、興奮や怒りっぽさ、妄想といった症状に対する効果が知られています。

新しい治療薬―抗アミロイドβ抗体薬

認知症の原因として最も多いアルツハイマー病では、アミロイドβ(ベータ)というタンパク質のが脳内に蓄積することで発症すると考えられています。このアミロイドβの蓄積を減らす薬として、レカネマブドナネマブといった抗アミロイドβ抗体薬が治療に用いられています。

認知機能の低下を遅らせ、症状が軽い期間を引き延ばすとされていますが、進行を完全に止めることはできません。

治療の対象となるのは、アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)や軽度のアルツハイマー型認知症と診断された方に限られています。また、アミロイドPET検査や脳脊髄液検査で、脳内にアミロイドβが蓄積していることが確認されるなど、一定の条件を満たす必要があります。

【関連記事】認知症の前段階「MCI(軽度認知障害)」とは?早期発見のためのチェックリストも紹介

その他の薬

認知症では、認知機能の低下だけでなく、不安や焦燥感、不眠、うつ状態、興奮、妄想といった症状(BPSD:行動・心理症状)がみられることがあります。

2024年に「ブレクスピプラゾール」という薬が、焦燥や興奮、攻撃性などのBPSDの諸症状に対する治療薬として新たに承認されました。

また、必要に応じて、気分や行動を整える薬、睡眠を助ける薬、漢方薬などが検討されます。

認知症の薬の副作用と注意点

認知症の薬は、症状の進行を抑えるのに役立ちますが、副作用が出ることもあります。気になる症状が出た場合は自己判断で中止せず、医師に相談するようにしましょう。

認知症の薬の副作用

使用する薬によって、副作用のあらわれ方は異なります。
コリンエステラーゼ阻害薬の主な副作用として、食欲不振、吐き気・嘔吐、下痢などが挙げられます。また薬の効果が強すぎて、かえって興奮しやすくなったり怒りっぽくなったりする場合もあります。また、貼り薬では、貼付部位の皮膚が赤くなり、かゆみが出ることがあります。

NMDA受容体拮抗薬(メマンチン)では、めまい、便秘、頭痛、眠気,さらには過鎮静などの副作用が報告されています。

抗アミロイドβ抗体薬の副作用

レカネマブとドナネマブはいずれも、点滴投与時にアレルギー反応が起こることがあります。そのほか、脳の血管に溜まったアミロイドβが除去される過程で、脳の微小出血や脳のむくみといった副作用が報告されています。

また、脳のむくみが強くあらわれた場合には、頭痛や意識障害、けいれんなどの症状がみられることがあります。治療開始前には、MRI検査で上記のような副作用の発現リスクが低いことを確認し、治療開始後もガイドラインに沿って定期的にMRI検査を受けることが必要です。

自己判断で中止しない

認知症の薬は、副作用に注意しながら少しずつ増やしていくことが基本です。
副作用が続いたり、効果が感じられなかったりする場合は、自己判断で中止せず医師に相談するようにしましょう。薬を中止すると認知機能が急速に低下するケースも報告されており、中止の判断は慎重に行う必要があります。
また、抗アミロイドβ抗体薬の使用中は、MRI検査などで副作用の有無を確認しながら治療が行われるため定期的な受診が欠かせません。

まとめ

従来使われている薬と新しい薬は、それぞれ異なる仕組みで認知症の進行を遅らせ、認知機能を維持する効果が期待されます。従来の薬は神経伝達物質のバランスを整えることで症状の緩和を目指し、新しい薬は原因物質に直接働きかけるなど、治療の選択肢は広がりつつあります。

ただし、いずれの薬も副作用が現れる可能性があり、すべての患者さんに適しているわけではありません。特に、自己判断で服用を中止すると、かえって症状が悪化、進行してしまう恐れもあるため、不安や異変を感じた場合は必ず専門家に相談するようにしましょう。

多くの認知症治療薬の開発にも関わっている医師が解説した、こちらの記事もぜひ参考にしてください。

【関連記事】認知症治療薬の現在と最新動向 ― 薬の開発にも携わる認知症専門医が解説

【参考文献】

取材・監修にご協力いただいた先生
古和 久朋(こわ ひさとも) 医師
神戸大大学院保健学研究科リハビリテーション科学領域 教授
神戸大学認知症予防推進センター センター長
東京大学医学部医学科卒業。同大学院修了。マサチューセッツ総合病院アルツハイマー病研究室への留学を経て、東大神経内科特任助教、神戸大学神経内科講師、神戸大学神経内科准教授を歴任。2017年より保健学研究科教授。2021年より認知症予防推進センター長を兼務。
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