2025年12月24日更新

レビー小体型認知症とは?原因や症状、症状別の対処法について

「存在しないものが見えると言っている」「夜中に大声を出して暴れる」「日によって調子が全く違う」これらの症状は、レビー小体型認知症の可能性があります。アルツハイマー型認知症とは異なる独特な症状を示すレビー小体型認知症について、原因、初期症状から対処法まで解説します。

レビー小体型認知症とは

レビー小体型認知症は、他の認知症とは異なる独特な症状が現れる病気です。基本的な特徴と他の認知症との違いについて詳しく見ていきましょう。

レビー小体型認知症の原因と特徴

レビー小体型認知症は、脳の神経細胞に「レビー小体」と呼ばれる異常なたんぱく質のかたまりが溜まることで起こる病気です。このレビー小体が脳の広い範囲にたまると、記憶力や判断力の低下をはじめとするさまざまな症状が現れます。

なぜ異常なタンパク質が蓄積するのか、その根本的な理由はまだ完全には解明されていません。

レビー小体型認知症の大きな特徴は、アルツハイマー型認知症のように「物忘れ」が目立たないことがある点です。それよりも、「昨日は元気だったのに、今日はぼんやりしている」といった日による症状の変動、「知らない人が部屋にいる」という具体的な幻視、動作が遅くなる、夜中に夢を見て暴れるといった症状が特徴的に現れます。

レビー小体型認知症と他の認知症との違い

レビー小体型認知症のほかに代表的な認知症には、アルツハイマー型認知症、血管性認知症、前頭側頭型認知症があり、それぞれ原因や症状が異なります。

たとえば、最も多いアルツハイマー型認知症は、物忘れから始まり、その後日にちやいる場所が分からないなどの症状が出現してくるのが特徴です。一方、レビー小体型認知症は、物忘れよりも幻視や体の動きの問題が先に現れることも多く、日によって症状が変わることもあります。

血管性認知症は、脳梗塞や脳出血が原因で起こり、症状が階段状に悪化します。レビー小体型認知症のような幻視や睡眠時の異常行動は通常見られません。

前頭側頭型認知症は、人格の変化や言葉の問題がよく見られる症状です。以前は温厚だった人が怒りっぽくなったり、言葉が出にくくなったりします。

このように、認知症の種類によって症状が異なるため、正確な診断を受けることが適切な治療やケアにつながります。

レビー小体型認知症の主な症状

パーキンソン症状を訴えるレビー小体型認知症患者

レビー小体型認知症によく見られる症状と、その対処法について紹介します。

よく見られる症状

レビー小体型認知症では「認知機能障害(判断力・注意力の低下)」「パーキンソン症状」「幻視」「レム睡眠行動異常症」「自律神経障害」などの症状が現れます。たとえば、以下のような症状です。

  • 理解力や判断力が低下する(認知機能障害)
  • 手がふるえたり動作が緩慢になったりする(パーキンソン症状)
  • 実際にはいないものが見える(幻視)
  • 夜中に悪夢を見て叫んだり、寝ている間に手足を激しく動かして暴れたりする(レム睡眠行動異常症)
  • 立ちくらみ、血圧の変動や便秘(自律神経障害)

特に注意したいのが、夜中の異常行動です。これは「レム睡眠行動障害」と呼ばれ、レビー小体型認知症の重要な初期サインの一つです。

また、「知らない人が家にいる」「虫が這っている」など、実際には存在しないものがはっきりと見える幻視も、比較的早い段階から現れることがあります。ご本人は本当に見えているため、周囲が否定すると混乱してしまうこともあります。これらの症状に気づいたら、早めに医療機関を受診することが大切です。

症状別の対処法

上記で示した、レビー小体型認知症の症状別の注意点や対処法をご紹介します。

認知機能障害

判断力や注意力は日によって、また時間帯によって調子が大きく変わります。そのため以下のような点に注意しましょう。

  • 調子の良い時間帯を把握して、大切な話や活動はその時間に行う
  • 調子が悪い時は無理をさせず、休息を優先する
  • 日によって対応を柔軟に変える

幻視

ご本人には本当に見えているので、「そんなものいない」と否定するのは避けましょう。「それは心配ですね」と気持ちに寄り添う姿勢が大切です。また、次のような工夫も効果的です。

  • 部屋を明るくして影を減らす。
  • どんな幻視が見えたかを記録して医師に伝える。
  • 医師の指示なく抗精神薬や眠剤を使用しない。抗精神薬や眠剤などに過剰に反応することが多いのもこの疾患の特徴です。

パーキンソン症状

パーキンソン症状には、手足の筋肉のこわばりや手足の震え、動作緩慢などがあります。転倒を防ぐための環境づくりと、体の機能を維持する取り組みが必要です。

  • 家の中の段差をなくす。
  • 手すりを設置し、滑りにくい床材を使用する。
  • リハビリや適度な運動を続ける。

レム睡眠行動異常症

寝ている間に夢の内容に合わせて叫んだり、手足を激しく動かしたりする症状です。寝ている間の安全を確保することが第一です。

  • ベッドの周囲に危険なものを置かない。
  • 低いベッドや布団を使用する。
  • 必要に応じて医師に相談し、薬物療法を検討する。

自律神経障害

立ち上がったとき、入浴や食事による血圧低下が大きくなり、一時的な意識障害や転倒などが出現することがあります。また、便秘なども目立つようになります。

  • 起立時、入浴前後や食事の前後など一日の血圧変動を把握し、降圧剤の調整や弾力ストッキングを使うなど血圧が下がりすぎるないようにする。
  • 風呂の温度は熱すぎない適温として、長時間の入浴を避け、また脱衣所や部屋の温度も適温とする。また、入浴中には変わりが無いか見守りを行う。食事中や食後に意識の低下が出現するときは1回の食事量を少なくする。
  • 便秘には早めに対処する。排便や排尿障害が、症状悪化のリスクとなります。
  • 必要に応じて医師に相談し、薬物療法を検討する。

診断と早期発見のポイント

レビー小体型認知症の診断は、症状の確認と専門的な検査を組み合わせて行います。国際的な診断基準では、幻視・認知機能の変動・パーキンソン症状・レム睡眠行動障害のうち、2つ以上がみられるとレビー小体型認知症の可能性が高いとされます。

【主な検査方法】

  • 詳しい問診と認知機能テスト
  • MRIやCTで脳の状態を確認
  • SPECT(脳の血流や神経の働きを画像で確認する検査)で血流やドパミンの状態を調べる
  • MIBG心筋シンチグラフィ(心臓の神経の働きを調べる検査)で心臓の自律神経を調べる

早期発見のポイントは、「物忘れはそれほどひどくないのに、変なものが見えると言っている」「夜中に暴れる」といった特徴的な症状に気づくことです。これらのサインを見逃さず、早めに専門医療機関を受診することで、適切な治療につなげられます。

レビー小体型認知症の治療法

机の上に置かれた治療のための薬

現在のところ、レビー小体型認知症を完全に治す方法はありませんが、症状を和らげて生活の質を保つ治療は可能です。

お薬による治療

認知機能を改善する「ドネペジル」というお薬が使われます。このお薬は、認知機能の改善だけでなく、幻視を軽くする効果も期待できます。体の動きが悪い場合は、パーキンソン病の治療薬を使うこともありますが、幻視が強くなる可能性があるため、医師が慎重に判断します。夜中に暴れる症状には、睡眠を整えるお薬が効果的な場合があります。

お薬以外の治療

リハビリテーション(理学療法、作業療法)を続けることで、体の機能をできるだけ維持できます。また、規則正しい生活リズムや適度な運動、社会との交流を保つことも大切です。

注意が必要なのは、統合失調症などで使われる抗精神病薬です。この種類のお薬は、レビー小体型認知症の症状を急に悪化させる危険があるため、使用する場合は専門医の慎重な判断が必要です。

レビー小体型認知症が疑われたら早めの相談と受診を

レビー小体型認知症が疑われる症状に気づいたら、一人で抱え込まずに専門機関に相談することが大切です。相談および受診先は、認知症疾患医療センター、物忘れ外来、精神科、脳神経内科などが適しています。

受診する際は、幻視の具体的な内容、夜中の様子、調子の良い時と悪い時の違いなどを記録しておくと、診断の大きな手がかりになります。また、お住まいの地域の地域包括支援センターに相談することもおすすめです。介護保険サービスの利用方法や福祉サービスなどの情報を得られます。

早期発見のカギは、幻視や理解力・判断力の低下を見逃さないことです。レビー小体型認知症の症状は、ご家族にとっても負担を感じたり戸惑ったりするものがありますので、一人で抱え込まず、地域の相談窓口や専門医療機関を積極的に活用し、最適なサポート方法を見つけていきましょう。

参考文献

  1. 一般社団法人 日本神経学会|能神経内科の主な病気 レビー小体型認知症
  2. 日本認知症学会|認知症とは?認知症をきたす主な病気
  3. J-stage|レビー小体型認知症の病態と、早期診断のコツ|長濱康弘|認知神経科学 18巻(2016)
  4. レビー小体型認知症研究会|レビー小体型認知症とは
  5. 日本神経学会|認知症診療ガイドライン2017 第7章 Lewy小体型認知症
取材・監修にご協力いただいた先生
医療法人社団ハイメディッククリニックWEST
橋川一雄(はしかわ かずお)医師
1983年大阪大学医学部を卒業し、大阪大学第一内科および中央放射線部にて、脳卒中のおよび脳核医学の臨床・研究を行う。2001年京都大学大学院医学研究科高次脳機能総合研究センター助教授となり脳科学の研究に従事。その後、2012年に国立病院機構大阪南医療センター脳卒中センター部長、2018年大阪けいさつ病院脳神経内科部長を歴任。2022年から医療法人社団ハイメディッククリニックWEST医師、および一般社団法人脳の健康を守る総合研究所理事に就任。
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