2025年12月19日更新

血管性認知症とは−特徴やよくある症状、予防のためにできること

血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などによって脳の血管がダメージを受けることで発症する認知症で、急激に発症することが多く、また脳の傷害部位によって症状が異なるなどの特徴があります。血管性認知症の原因や特徴、診断基準、よく見られる症状、そして予防のために日常生活でできることについて解説します。

血管性認知症とは?

血管性認知症は、脳の血管がダメージを受けて発症する認知症で、認知症の代表とされるアルツハイマー型認知症とは原因や特徴に相違があります。

血管性認知症の原因と特徴

血管性認知症とは、脳梗塞や脳出血などの脳血管の破綻によって脳の働きが低下して、認知機能低下を来す疾患です。脳梗塞では、脳の中の血管が詰まり、その血管によって養われている神経細胞に十分な酸素や栄養が届かなくなって神経細胞の機能が低下します。また、脳出血では、血管が破れて外に漏れ出た血液が、血腫(血の塊)を作ります。この血腫が脳組織を圧迫したり神経線維を断裂させることによって、神経の働きを低下させまます。
日本神経学会が示す血管性認知症の診断基準は、次のように書かれています。

VaD (血管性認知症のこと)の診断の要諦は,① 認知症がある,② CVD (脳血管障害)がある,③ 両者に因果関係がある,の 3 点である.① は,病歴,簡易知能検査,高次脳機能検査等により診断し,② は病歴,神経症候,画像診断による.両者の因果関係については,CVD 発症と認知症発現との時間的 関係,および,空間的関係,すなわち,病変部位と大きさが認知症の責任病巣として妥当 かどうかの判断による.

引用:日本神経学会「第6章 血管性認知症」

わかりやすく言うと、以下の3つに当てはまる場合に血管性認知症(VaD)と診断されます。

  1. 認知症の症状があること:病歴や認知機能検査で確認します
  2. 脳の血管の病気があること:病歴や神経症状、MRIなどの画像診断で確認します
  3. その2つに因果関係があること:脳卒中の発症時期と認知症の症状が出た時期が近いか、脳の損傷部位が認知症の原因として妥当かを評価します

血管性認知症は、アルツハイマー型認知症に次いで2番目に多い認知症のタイプで、日本では認知症全体の約20%を占めるとされています。特に脳卒中を経験された方は、その後の認知機能の変化に注意が必要です。

大きな特徴は、症状が「階段状に悪化する」ことです。脳卒中が起こるたびに症状が段階的に悪化し、その間は比較的安定した状態が続きます。また、障害された脳の部位によって、現れる症状が異なるのも特徴の1つです。

血管性認知症とアルツハイマー型認知症の違い

血管性認知症とアルツハイマー型認知症は、原因も症状の現れ方も異なります。

  アルツハイマー型認知症     血管性認知症
原因の違い脳にアミロイドβやタウというタンパク質が異常に蓄積することで、神経細胞が徐々に失われていく。脳梗塞や脳出血などの脳血管障害が原因で、脳の一部が損傷を受けることで起こる。
症状の進み方の違い症状が徐々に、なだらかに進行していくことが多い。脳卒中が起こるたびに症状が段階的に悪化する「階段状の進行」が特徴。
初期症状の違い最近の出来事を忘れてしまう「短期記憶の障害」が目立つことが多く、その後日にちを間違うなどの混乱が出現する。通常は脳卒中による片麻痺などの身体症状に伴って、記憶力の低下、判断力の低下、意欲の低下や感情のコントロールができないなどの症状が出現する。当初は身体症状が目立つため、時間が経ってから気づかれることも多い。また病巣によって症状が異なる。


血管性認知症では、症状が急に悪化した後しばらく安定期が続き、また次の脳卒中で悪化するというパターンを繰り返します。

このように、両者には原因が異なることから、正確な診断を受けることで、それぞれに適した治療やケアを行うことができます。

血管性認知症の主な症状と受診のタイミング

脳血管の病気のイメージ

脳卒中を経験された方は、身体症状のほかにも認知機能の変化に注意が必要です。血管性認知症の具体的な症状と、医療機関を受診すべきタイミングについて解説します。

脳梗塞・脳出血後に現れる血管性認知症の主な症状

血管性認知症でよく見られる症状には、以下のようなものがあります。

【認知機能に関する症状】

  • 新しいことを覚えられない
  • 判断力・計画力が低下する
  • 注意力が低下する
  • 考えるスピードが遅くなる

【感情や行動の変化】

  • 意欲が低下する
  • 感情のコントロールが難しくなる
  • 気分の落ち込みが見られる
  • 以前とは違う行動をとるようになる

特徴的なのは、これらの症状が急に現れたり、階段状に悪化したりすることです。また、「まだらな症状」といって、ある能力は保たれているのに、別の能力だけが著しく低下することもあります。

ただし、脳梗塞や脳内出血が起こっていないにもかかわらず、生活習慣病などによって脳血管が徐々に障害を受けて発症するタイプの血管性認知症もあるとされています。その場合は、血管性認知症の特徴とされる突然の発症や段階的悪化が見られないこともあります。

受診するタイミングと診療科

上記のような症状が見られる場合は、早めに医療機関を受診するようにしましょう。脳卒中などのため通院中のかかりつけ医があるときは、まず主治医に相談すると良いでしょう。また、脳に関して主治医がいないときには、以下の診療科受診が勧められます。

  • 脳神経内科(脳神経外科)
  • 精神科・心療内科
  • もの忘れ外来
  • 認知症疾患医療センター

診断には、脳卒中などの脳の病気と、認知症の症状との因果関係の有無が重要です。受診する際は、脳卒中を発症した日や、症状が目立ってきた時期などをまとめておくと診断の助けになります。

血管性認知症を予防するためにできること

血管性認知症予防のために血圧を管理する人

血管性認知症は、脳卒中の予防と再発防止が最も重要です。日常生活でできる予防法について解説します。

生活習慣の改善

血管性認知症の最大の予防法は、脳卒中の原因となる生活習慣病(高血圧、糖尿病、脂質異常症など)をコントロールすることです。

  • 減塩を心がける(1日6.5〜7.5g未満が目標)。
  • 定期的に血圧を測定し、医師から処方された薬を毎日きちんと服用する。
  • 喫煙は血管を傷つけるため、禁煙に取り組む(禁煙外来の利用も検討)。
  • ウォーキングなどの有酸素運動を取り入れる(週に150分程度)。
  • 野菜や果物、青魚、大豆製品を積極的に摂取し、動物性脂肪や過度な飲酒は控える。
  • 脳卒中による身体症状があるときは、積極的にリハビリテーションを行う。

これらの生活習慣を無理なく継続することが、血管の健康を保ち、脳卒中の再発を防ぐことにつながります。

参考:厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023

定期的な受診

脳卒中を経験された方は、再発予防のために定期的な受診を続けることがとても重要です。
かかりつけ医で血圧、血糖値、コレステロール値などを定期的に測定し、薬を指示通りに服用しましょう。また、認知機能のチェックも定期的に受け、日常生活での変化があれば医師に報告することが大切です。
突然の頭痛、顔や手足の片側の麻痺やしびれ、ろれつが回らない、めまい、物が二重に見えるといった脳卒中の再発サインが現れた場合には、すぐに医療機関を受診してください。

周囲のサポートも重要

血管性認知症の予防や症状の管理には、ご家族や周囲の方のサポートも大きな役割を果たします。ご家族が生活習慣の改善に一緒に取り組んだり、服薬管理をサポートしたり、日常生活での変化に気づいて医師に伝えることで、早期発見や適切な対応につながります。

また、社会的な孤立は認知機能の低下を早める可能性があるため、趣味や活動を続け、友人や家族との交流を大切にすることも重要です。必要に応じて、地域包括支援センターに相談し、デイサービスなどの介護保険サービスの利用も検討しましょう。

血管性認知症は、適切な予防と管理により、発症や進行を遅らせることができる認知症です。日々の生活習慣の改善と定期的な受診を継続することが、何よりも大切です。

血管性認知症かな?と思ったら早めの受診を

血管性認知症は脳卒中後に起こりうる認知症で、早期発見と適切な対応が重要です。記憶障害だけでなく、判断力の低下や感情の変化など、さまざまな症状が現れることがあります。
脳卒中を経験された方は定期的な受診を続け、日常生活での変化に注意を払いましょう。生活習慣の改善や継続的な治療により、症状の進行を遅らせることが可能です。

また、ご家族や周囲の方のサポートも回復や生活の質の向上に大きく役立ちます。気になる症状があれば、遠慮なく医療機関に相談することが大切です。

■参考文献

  1. 日本神経学会|第6章 血管性認知症
  2. 日本神経学会|血管性認知症とアルツハイマー病の共通病態と鑑別診断|冨本秀和
  3. 国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター|意外と身近な「血管性認知症」
  4. 京都府立医科大学|総説 血管性認知症に関する疫学研究〜京都初の調査研究からの情報発信〜|栗山ら|2018
取材・監修にご協力いただいた先生
医療法人社団ハイメディッククリニックWEST
橋川一雄(はしかわ かずお)医師
1983年大阪大学医学部を卒業し、大阪大学第一内科および中央放射線部にて、脳卒中のおよび脳核医学の臨床・研究を行う。2001年京都大学大学院医学研究科高次脳機能総合研究センター助教授となり脳科学の研究に従事。その後、2012年に国立病院機構大阪南医療センター脳卒中センター部長、2018年大阪けいさつ病院脳神経内科部長を歴任。2022年から医療法人社団ハイメディッククリニックWEST医師、および一般社団法人脳の健康を守る総合研究所理事に就任。

※掲載している情報は、記事公開時点のものです。

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