アルツハイマーと認知症は違うもの?アルツハイマー型認知症の原因や症状を解説

「認知症=アルツハイマー」と思われがちですが、実は、認知症にはいくつかの種類があり、アルツハイマー型認知症は認知症の種類の一つです。ただし、アルツハイマー型認知症は、認知症の中で割合が最も多いため、多くの方が関係するのもこのタイプです。
アルツハイマー型認知症の基礎知識から、原因・初期症状・進行の特徴について解説します。
目次
アルツハイマー型認知症とは
認知症とは、認知機能(脳で情報を処理して、適切に考えたり行動したりする力)が低下し、日常生活や社会生活に支障をきたす「状態(症状)」をいいます。その症状を引き起こす原因として、最も多いのがアルツハイマー病です。
アルツハイマー型認知症の概念と特徴
日本神経学会は、アルツハイマー型認知症の概念を以下のように示しています。
概念 Alzheimer 型認知症は,病理学的に神経原線維変化(tauopathy)とアミロイド(Aβ amyloidosis;大脳皮質,脳血管)の 2 つの変化を特徴とする Alzheimer 病によって大脳皮質,海馬,前 脳底部で神経細胞死,シナプス減少,アセチルコリン低下が起こり,認知症を発症した段階で ある.主要症状は緩徐進行性の出来事記憶 episodic memory 障害に始まる記憶と学習の障害が 典型的で,失語,遂行機能障害,視空間機能障害と人格変化などの社会的認知機能の障害に進 展 す る.後部大脳皮質萎縮症 posterior cortical atrophy, ロゴペニック 型失語 logopenic aphasia,前頭葉型 frontal variant などの視覚構成機能や失語,前頭葉機能障害などで発症する 非典型例もみられる。
日本神経学会|認知症診療ガイドライン2017|6 章 Alzheimer 型認知症
つまり、アルツハイマー型認知症は、脳内に「アミロイドβ(ベータ)」と「タウ蛋白(たうたんぱく)」という異常なタンパク質が蓄積し、記憶に重要な働きをする、海馬や大脳皮質の神経細胞が死んでしまう病気です。最近の出来事を忘れる症状から始まり、徐々に言葉の理解、計画実行能力、空間認識、性格などに影響が広がります。人によって症状の現れ方は異なりますが、進行性の認知機能低下が特徴です。
アルツハイマー型認知症の割合と統計
厚生労働省のデータによると、アルツハイマー型認知症は認知症全体の約67.6%を占めており、認知症の中でも最も多いタイプが、このアルツハイマー型認知症です。

認知症には、アルツハイマー型以外に脳梗塞や脳出血などが原因で起こる血管性認知症(全体の約19.5%)、幻が見える症状やパーキンソン病のような症状が特徴的なレビー小体型認知症(全体の約4.3%)、性格が変わったり社会的に不適切な行動が目立ったりする前頭側頭型認知症(全体の約1.0%)などがあります。これらは「4大認知症」と呼ばれ、認知症全体の9割以上を占めています。
認知症のタイプによって症状や進み方、対応方法が違うため、正確な診断を受けることが大切です。
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アルツハイマー型認知症の原因と認知症のリスク因子
アルツハイマー型認知症の原因は、脳の中に「アミロイドβ(ベータ)」と「タウ蛋白(たうたんぱく)」という異常なタンパク質がたまることだと考えられています。これらの異常なタンパク質がたまることで、脳の神経細胞が少しずつ死んでいき、特に記憶を司る「海馬」という部分が縮んでしまうため、もの忘れなどの症状が現れます。

なぜこれらの異常なタンパク質がたまるのか、根本的な仕組みはまだ完全に解明されていませんが、このアミロイドβの蓄積には遺伝的な要素が関わっており、ApoEという遺伝子のタイプによってリスクが高まるといわれています。また最近の研究では、異常なタンパク質の蓄積以外にも、「脳疲労」が原因の一つとして注目されています。
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また、世界的に権威ある医学雑誌「The Lancet(ランセット)」の専門家委員会は、認知症のリスクを高める14の要因を報告しています。具体的には、以下のとおりです。
認知症のリスクを高める14の要因
幼少期(0~18歳)
- 1.教育の不足
学ぶことで脳の神経ネットワークが強化されるため、この時期に教育の機会が不足すると、将来的に認知症リスクを高めるといいます。
中年期(45歳~65歳)
- 2.難聴
- 3.高LDLコレステロール
- 4.うつ病
- 5.外傷性脳損傷
- 6.運動不足
- 7.高血圧
- 8.喫煙
- 9.糖尿病
- 10.肥満
- 11.アルコールの過剰摂取
認知症は高齢期の多くは高齢期に発症しますが、その前の中年期の生活習慣や生活習慣病が認知症リスクを高めるとされています。
晩年期(65歳以上)
- 12.社会的孤立
- 13.大気汚染
- 14.視力障害
65歳以上では、退職して社会や人との接点が少なくなったり、家族に先立たれて会話が減ったりすると脳への刺激が減り、認知症のリスクを高めるとされています。
アルツハイマー型認知症は、遺伝的な要因、年齢を重ねること、生活習慣などが複雑にからみ合って起こる病気であり、完全に予防することは難しいものの、リスクを減らすことは可能だといえます。
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アルツハイマー型認知症の初期症状と進行パターン

アルツハイマー型認知症の初期症状として最も特徴的なのが、最近の出来事を忘れてしまう「近時記憶障害(きんじきおくしょうがい)」です。
初期の段階では、次のような症状が見られます。
- 数分前や数時間前の出来事を忘れる
- 同じことを何度も聞く
- 物をどこに置いたか忘れる
- 約束を忘れる
- 今日が何月何日か分からなくなる
この段階では昔の記憶は比較的残っているため、「ちょっともの忘れがひどくなったかな」程度に思われ、見逃されがちです。
病気が進むと、よく知っている道で迷う、着替えや入浴に手助けが必要になるといった症状が現れます。さらに進行すると、言葉でのやりとりが難しくなり、食事や排泄、歩行など基本的な動作にも全面的な介助が必要になります。
ただし、進む速さには個人差があり、早期に見つけて早めに対応することで、進行を遅らせることができます。
なお、認知症の一歩手前の状態として「MCI(軽度認知障害)」という段階があります。MCIは、もの忘れなどの症状はあるものの、日常生活には大きな支障がない状態です。この段階で適切な対応を取ることで、認知症への進行を防いだり、遅らせたりできる可能性があります。
アルツハイマー型認知症の早期発見・早期対応が生活の質を守る鍵
アルツハイマー型認知症は、認知症の中で最も一般的なタイプであり、加齢や遺伝要因、脳内の異常タンパク質が複雑にからみ合って発症します。初期症状を見逃さず、早期に医療機関へ相談することで、進行を遅らせる手立てが取れる場合があります。
ご家族が「認知症かも?」と思ったときの見分け方や、病院を受診してほしいのにご本人が嫌がる場合の対処法などは、認知症を専門とする医師によるこちらの記事もぜひ参考にしてください。
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「物忘れは老化の一部」と片付けず、正しい知識をもって行動することが、本人と家族にとって重要な一歩となります。
【参考文献】
取材・監修にご協力いただいた先生
国立長寿医療研究センター/ハイメディック名古屋トラストクリニック
伊藤健吾(いとう けんご)先生
国立長寿医療研究センター病院放射線診療部長、認知症先進医療開発センター脳機能画像診断開発部長、同センター長、治験・臨床研究推進センター長を務めた。専門は認知症の画像診断。SPECT、PET、MRI、MEGなどを用いた脳形態および機能の総合的評価に関する研究を行う。
アルツハイマー病の早期診断に関する多施設共同研究(J-COSMIC研究、SEAD-JAPAN研究、J-ADNI研究、AMEDプレクリニカルAD研究など)に参加。画像や血液バイオマーカーを用いた早期診断法の開発、認知症領域の臨床研究の推進に取り組む。国立長寿医療研究センターにおける認知症の診断、とくに画像診断の研究開発分野において重要な役割を果たしてきた。最近は、認知症検診の立ち上げにも精力的に取り組んでいる。
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